ボイストレーナーをしていて、とても多い質問
「ミックスボイスはどう出すのですか?」
これは、私の学生時代にも、一番の悩みの種でした。
私は、声楽専攻で大学4年間勉強しましたが、
卒業後の進路はミュージカルの世界に進みたいと決めていました。
ここでぶち当たった壁が、それぞれの声の出し方の違いです。
声楽というとピンとこない方は、オペラのアリアを思い浮かべてください。
または、もののけ姫の主題歌も声楽の発声方法で歌われています。
日本の声楽とは、西洋音楽史の中で広まったオペラを歌う為の発声方法のことを指しています。彼らは、広い劇場でマイクを使わずに物語を全て歌で表現しました。その為に、共鳴を駆使して音量を出し、音程の高低に関係なく、統一感のある音色を使いました。
これは、現代では頭声と呼ばれ、声帯の使い方は裏声になります。
(これは、女性のソプラノ歌手の場合で、男性は地声のような声帯の使い方をします)
子の発声方法を身に付けるために、師匠から地声禁止令を発令され
裏声発生を徹底的に喉に慣れさせるトレーニングが始まりました。
しかし!私が目指している声はミュージカルの力強い声!
こちらは、アナ雪の主題歌「Let it go」を歌ったことで日本でもご存じの方も多いと思います、ミュージカル女優のIdina Menzel(イディナメンツェル)。
ミュージカルとオペラの違いは、まずマイクを使うところ。また、歌だけでなくセリフがあります。セリフと歌の声質の変化が少ないこと(違和感なくセリフから歌に移行する)ことを求められることから、話し声に近い声(地声)のような歌い方をしています。
ここで私が陥った罠。
話し声と同じように歌う=地声で歌う
こう思っっていた私は、師匠の目を盗んでは、地声でミュージカルナンバーを練習していました。でも地声で高音を出すのは限界があり、裏声にチェンジすると、オペラのような響きMAXの裏声になってしまう。
この、地声と裏声地獄に光となったのがミックスボイスという存在です。
当時、ミュージカル界で大活躍していた先生のレッスンを受ける機会があり
私が1フレーズ歌うなり、
「歌詞を読んでみて」
と言われました。そして、普段話している声(地声)で歌詞を読むなり
「その声は、ミュージカルのセリフにも歌にも全く使えない声」
と爆弾を落とされました。
当時の私は、「???」となるばかりでしたが
そのあと原曲の歌詞(英語)を読むことでその謎が少しずつ解けていきました。
私たちが普段使っている日本語は、英語に比べて共鳴させる場所が喉近く
息を一言一言止めるような声帯の動きをして発音しています。
しかし、英語は共鳴させる場所が子音によってさまざまで、1つの単語に複数の子音が含まれることから、息の流れと共に発音されます。
このように、普段使っている言葉の違いから喉の使い方が微妙に違い、
更には、私が地声だと思っている声は、英語発音が出来ないのです。
つまり、ミュージカル=地声で歌うと思っていた私の
そもそもの地声の概念が、ミュージカルで使う地声と違っていたのです。
そして、この私が地声だと思っていたミュージカルの歌い方と、英語の発音こそ
日本で言われるミックスボイスだったのです!
ミュージカルでミックスボイスが使われる理由
・セリフと歌声の変化が少なく、歌に感情を乗せやすい
・音の高低に関わらず、統一感のある歌声になる
・地声で音量を出すより、共鳴を使って音量を出す為、喉の負担が減りロングラン公演にも対応できる
しかし、このミックスボイスという言葉に囚らわれているのは日本人だけで
ブロードウェイのシンガー達は、共鳴させる場所や口の形、支えの方向によって
声質をコントロールしています。
ですので、あなたが今、ミックスボイスを出したい!と思い
日本のボイトレ情報を読み漁っているのなら、
一度だけ、自分の歌声に耳を傾けてほしい。
どれがミックスボイスなのかを聞き分ける前に、
・共鳴するとはどういうことなのか
・口の形や息のスピードを変えると声がどう変わるのか
など、自分の声の可能性をどんどん広げてほしいのです。
ミックスボイスが出せるから歌が上手に歌えるわけではありません。
喉の柔軟性、心の柔軟性が、歌うまの一番の近道です♪
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